歴史の分かれ道1999.8)

「混迷と衰退」に通じる道 「平和と繁栄の継続」に至る道 軍備の発達と拡張 偶発的ミサイル発射の可能性 人々の融和が進む 物質優位 精神優位

 

現代の人類は歴史的に見て、一つの大きな分かれ道に立たされている。 一つの道は「混迷と衰退」に通じる道であり、もう一つは「平和と繁栄の継続」に至る道である。

第一の道は、世界各国の軍備の発達と拡張、人種間や民族間の紛争、宗教の相違による争い、国家間や社会階層間の貧富の差から来る怨嗟、言葉の相違による誤解や無理解、などの形で表面化している。 中でも軍備の発達と拡張は、それを管理しコントロールする人達の能力の限界を越えようとしている。

大型の武器や防衛システムの隅々にまで組み込まれたコンピュータと制御用ソフトウエアは、一人の人間が理解できる範囲を遥かに越えており、防衛システム全体を詳細に理解している人間などテレビ映画の中にしか存在しない。 システム全体の構築や維持、点検には多数の専門技術者が互いに入り組んで協力しなければならない。 そこには当然のこととして、技術者相互間の意思疎通の齟齬やソフトウエアのバグ(間違い)が含まれることは避け難いことである。

指揮者の一寸した思い違い、マイクロコンピュータの小さなバグ、雷や雨などの自然現象によるノイズや電気回路の絶縁不良、操作員の連絡ミスや操作ミス、麻薬などに起因する精神異常者による無目的な悪戯、制御装置に含まれる一部品の故障や誤動作、などなどから、偶発的に核弾頭付きミサイルが発射される可能性は完全には否定できない。 万一そんな悪夢が発生すれば世界はどんな事態になるのか、誰にも想像がつかない。

2の道は交通機関(特に飛行機と自動車)の飛躍的な発達による国外旅行の発展、各国民の移動の増加と異民族の接触増加から来る国際結婚(異人種間の結婚を含む)の増加、英語の事実上の国際共通語化による意思疎通の進展、通信メディア(電話、テレビ、ラジオ、書籍、インターネットなど)の発達と普及に伴う各国国民間の価値観や認識の共通化、などに顕在化している。 この現象が今のスピードで継続すれば、国家、地域、人種、民族、宗教、などの相違によるお互いの壁が格段に低くなり、人々の融和が進むことが期待できる。

第一道は科学の発達に象徴される「物質優位」の道であり、第2の道は科学の発達に助けられた「精神優位」の道である。 現在は往々にして、「物質」が「精神」を凌駕しようとしているかに見えるが、ここは何としても「精神」が「物質」の上に立たねばならない。 軍隊を喩えに言えば、civilian control (文民統制)の原理である。 軍人が突出して国を滅ぼした例は、第2次世界大戦の日本やドイツだけでなく、歴史に頻出する教訓である。

第一の道に入り込む以前に、何としても第2の道に進みたいものである。