お客様は神様か1999.8)

神とお客は全く別もの 本来お客と店は対等 世の中が供給過剰 厚顔な外国人

 

「お客様は神様と思え」と言われることがある。 特にサービス業の新入社員はそう言って教育される。 しかし本当にそう思うべきなのだろうか。 勿論NOである。 そんなことを本気で思っているのは世界でも日本人くらいなものである。 お客様はお客様であって大切にしなければいけないが、神様ではない。 神様は、キリスト教徒にとっては天に居られる主(イエスキリストの父)が唯一の神であり、回教徒にとってはアラーが絶対神であり、ヒンズー教徒や古代のギリシャ人、ローマ人にとっては何人もの神がいるが、人間のお客とは全く別ものである。

「お客様は神様」と言うのは単なる例え、比喩である。 そんな事は誰でも分かっているはずであるが、何度もこんな事を言われていると誤解が生じてくる。 例えば、店ではお客は自分が神様だと思い込み、好き勝手な要求をしたり、むやみにいばったりする。 理屈に合わない無茶を平気で言う。 一方店員は唯ご無理ごもっともの低姿勢で対応する。

しかし、原則的には本来お客と店は対等である。 お客は金を払い品物(サービス)を受け取る。 店は客からお金を恵んで貰うわけではない。 お金は客のものだが、品物は店のものだ。 たまたま、現在の世の中が供給過剰の状況にあり、売る側の競争が激しいためにお客が強い立場にいるだけである。

世の中の情勢が変わり供給過剰から供給不足になるようなことがあれば、立場は一遍に逆転する。 こんな事が起きないと言う保証はない。 客の立場に在るからと言って威張ってはいけない、品物(サービス)を受け取ったことを感謝すべきである。 店側も卑屈になることはない、お金に見合った良い品物(サービス)を自信をもって提供すべきである。 商売は両者が対等である事を忘れてはいけない。

また、会社での業務においても、お客からの要求を営業が何でもかんでも鵜呑みにしてしまうことが起きる。 これは特に、一部の厚顔な外国人との交渉の際に失敗の元となることがある。 彼らは駄目で元々とばかりに、次々と理屈をもうけて要求を突き付けてくる。 これを「お客様は神様」の精神でYES YESと続けていると、際限なく付け込んでくる。 ビジネスは総て契約に基づいて行われる。 例え相手がお客様であろうとも、契約にないことは明確にNOと言うべきである。

一方、お客さまは時には良き問題提供者であり、且つ、時には良き問題解決者でもある。 メーカーや商社が思いもよらぬ観点から、貴重な意見を発することがある。 従って、お客さまの言葉に謙虚に耳を傾けることもまた大切である。